無料公開中の絵本『えんとつ町のプペル』の感想と作者について思うこと


みなさんは『えんとつ町のプペル』はもう読みましたか?

キングコングの西野さんと絵本の制作チームが手掛けた絵本で、ウェブで全ページ無料公開して大変話題に(むしろ論争に)なりましたね。

遅ればせながら、無料公開しているウェブ絵本を読んでみたので、ストーリーや制作過程について私が感じたことを書いてみたいと思います♪

☞『えんとつ町のプペル』は現在こちらのページで読むことができます

 


『えんとつ町のプペル』ってどんな絵本?

キングコングの西野さんが手掛けた、ということは結構皆さんご存知だと思います。

でも、この絵本は西野さん一人で制作したものではなく、分業制であるということは意外と知られていないかもしれません。少なくとも、私の夫は知りませんでした^^;西野さんご自身が、ブログでご説明されています。

公式ブログスクリーンショット

絵本『えんとつ町のプペル』の制作は分業制。
「西野はゴーストライターを雇っている!」などと揶揄されることも多々あるのですが、いやいや企画立ち上げから、「今度は分業制で作ります」と発表しており、その為にお金(クリエイターさん達に支払うギャランティー)が必要なので、クラウドファンディングを利用しました。
絵本の最後には、いわゆる『奥付け』ではなく、スタッフクレジットページを設けており、この作品を一冊でも多く届けることが、制作に参加してくださったスタッフさんへの最大の恩返しだと僕は考えます。

分業制について思うこと

分業制という試み、個人的には素晴らしいと思います。

私も、こうして創作絵本のサイトを運営しており、ほとんどの絵本の挿絵はフリーイラストを活用しています。すべてのイラスト制作者様に感謝の気持ちを込め、必ず素材提供元のサイトや作者様のお名前をリンク付きでご紹介しています。

こういうスタイルで絵本を作っている理由はザックリ言うと2つあって、

  • 自分で挿絵を描いていくには限界がある
  • フリー素材にするにはもったいない!と感じるイラストを有効活用したかった

なので西野さんの考えに共感できる部分はあります。

 

著書だって共著があるし、漫画もグループでの制作、あるいは原作者と漫画を描く人が別、というパターンが多々あります。絵本も、挿絵と文が別の人というスタイルは昔から存在しています。

ただ、絵本の場合は、一人の方が絵も文も手掛けているケースは確かに多いと思います。西野さんも、当初は一人で絵本を制作されていたようです。

なぜ、今回分業制で絵本を制作しようと考えたのか。それは。

「各専門分野のプロフェッショナルに仕事を委託して、制作費をかけて作った絵本」は、地球上に存在しないのです。
理由を聞けば、漫画や映画に比べて、基本的にメガヒットが出ない『絵本』というものは、制作コストをできるだけ抑えるのがセオリーとなっているそうです。
だから一人で作るしかありません。

しかし、です。
日本という、世界トップレベルのイラストレーターがゴロゴロ転がっている国に生まれたのに、その才能を活かさないのは、もったいない話です。

―【世界初】キングコング西野が、常識破りの手法で絵本『えんとつ町のプペル』を作る より

分業制という事自体は目新しい事では無いと思います。

でも、敢えて外注してビジネスとして成立させようとするこのプロジェクトは、確かに話題になるし、クリエイターさんたちにとってもチャンスであるはず。

時に過激な発言をしたり、絵本の無料公開で大批判を浴び、炎上商法だ!などと言われることもある西野さん。でも、結果的に話題になり売り上げになり、制作関係者さんたちに還元できたなら、彼のやり方は大成功だと言えるでしょう。

ストーリーついて思うこと

ネットで全ページ無料公開されていますので、あらすじはここでは書きません。でも、感想を書く上でどうしてもストーリーに触れる必要があるので、ぜひ絵本をご覧になってからこのブログの続きを読んでください。

icon-lightbulb-o 無料公開サイト

 

どこかで読んだような?既視感のあるストーリー。だけど・・・

「えんとつ町」という名の通り、舞台はえんとつだらけの町です。しかも、4000メートルの崖に囲まれているという設定。空は煙でおおわれ、人々は空の青さも輝く星も知らない。

西野さんはあとがきの中で、この町についてこう語っています。

えんとつ町は、夢を語れば笑われて、行動すれば叩かれる、現代社会の風刺

ふむふむ。なるほど。

 

このえんとつ町の描写は冒頭部分で出てくるのですが、まず私が気になってしまったのは、「4000メートルの崖」。富士山よりも高い、山ではなく「崖」に囲まれている。

進撃の巨人の壁の比ではないぞ・・・。

読み進めてみると海が存在したり、どんな地形なのか想像するのが難しいのですが、非常に閉鎖的で息苦しい世界であることを表現したかったのでしょう。

 

また、えんとつの煙で空が見えない。

私は最初、人間の愚かさが招いた環境破壊がテーマかな?という印象を受けました。

イメージとしては、ジブリの『風の谷のナウシカ』とか。

予想は見事に外れた訳ですが(笑)

『えんとつ町のプペル』は、ゴミの塊にひょんなことから心臓が宿って「ゴミ人間」となったプペルと、プペルに心を許す少年、ルビッチの物語。ルビッチはプペルにどこか懐かしいにおいを感じ、死んでしまった父親の思い出話を語ります。

 

・父親の写真が入ったペンダントをなくしてしまったこと。

・えんとつ町では見ることができない空には、光り輝く星があると教えてくれたこと。

・でも、星の存在を町の誰も信じてくれず、嘘つき呼ばわりされて死んでしまったこと・・・。

 

このシーンで私は、ジブリの『天空の城ラピュタ』を思い出しました。パズーのお父さんは、ラピュタを見つけたけれど、噓つき呼ばわりされて死んでしまった。

なんだか重なるなぁ・・・。

 

その他、ストーリーの展開、エピソードの端々にどことなく既視感があるような気がしました。

ただ、そのことを批判するつもりは全くないので誤解しないでください^^;

 

何か新しい物語を作ろうとするときに、元ネタとなるストーリーがあったり、好きな話に影響を受けて似た雰囲気になったりすることはよくあること。

『天空の城ラピュタ』も、『ガリバー旅行記』や『ラーマヤナ』のストーリーを元ネタにしているのは有名な話。絵本のように短い文章で構成させる著書において、伝えたいことを詰め込むためには、ある程度見聞きしたことのあるような展開をストーリーに組み込む必要があると思います。

『えんとつ町のプペル』は、どこか既視感のあるストーリー。だけど、伝えたかったであろうことは何となく分かる気がします。西野さんが意図してそういう作品に仕上げたのかは分かりませんが、“骨組み”を組んだ上でメッセージを伝えたいという強い思いはしっかりと感じました。

 

絵本とは別に、長編の児童書版があったらいいと思う

正直に言って、『えんとつ町のプペル』という作品は、絵本にするにはストーリーに対して文章量が少なすぎると思いました。絵本としはむしろ文字数は多い方ですが、伝えたいことが埋もれてしまっている印象なんですよね。

ディズニーやジブリの映画も絵本化されていますが、絵本に収めようとするとどうしても、いろんな部分を端折った少ない文章になってしまします。すると、ただのあらすじのようになってしまっています。それと同じ印象なんですね。

ボリュームとしては、ライトノベルくらいの文章量があってもいいと思います。

 

色々な要素を盛り込み過ぎて、全体の文章量に対して“骨組み”の割合が多い印象。人によっては、いろんな話のつぎはぎで、オリジナリティの低い作品だと感じる方もいるかもしれません。

私は西野さんが伝えたかったのは何なのか、探り探り読み進めてみました・・・。が、もっと掘り下げて、児童書版のような形でしっかりと読んでみたいなと思いました。

環境問題、人間関係、社会問題、いじめ、弱者差別、家族愛、夢、信念、思いやり。あらゆるテーマをもっと深く書き込んで欲しい。そうすれば、既視感も薄れ、オリジナリティの高い、より素晴らしい作品になると思います。

子供のことをナメるのは辞めて、あくまで『対等』な立場で、「だからこそ手加減をするのは辞めよう」

キングコング 西野 公式ブログタモリさんと話した『子供の話』」より

映画化の話も出ているようですが、基本的に書籍と映像は別次元のものだと私は思っています。特に子供にとっては。手加減ナシで向き合おうというのなら、あくまでも本という媒体で勝負して欲しい。

絵本もそろそろ卒業する年齢の、ちょっとお兄さん、お姉さんになった子たちも、もう一度楽しめるような児童書版があったらいい。

これが、私の率直な感想です。

挿絵は素晴らしい!が、好みは分かれるところ

『えんとつ町のプペル』は2,160円。そこそこ高額です。その理由の一つとして、挿絵の色にこだわり、通常の本の印刷では使わない特殊な色のインクを使用しているとか。

挿絵は複数のイラストレーターさんが手掛けています。実際の絵本を手に取ってみた訳ではないのですが、挿絵一枚一枚、本当に丁寧に書き込まれています。

まるで画集のよう。

※絵本の挿絵は西野さんの意志により、著作権フリーとされており、ブログなどに自由に貼り付けることが許可されています。

 

ただ、絵のテイストはどこか外国風で、好みは分かれるんじゃないでしょうか。

また、舞台や人物の顔が海外のイメージなのに、ちょうちんがあったり日本語の看板があったりするのが、面白いと感じるかチグハグだと感じるか・・・私は正直後者でした(笑)

ある意味私も固定観念に捕らわれているのでしょうけど、敢えて看板の文字なんかは要らなかったかな、なんて思います^^;

 

また、ストーリーもそうですが、挿絵についても対象年齢がやや高めの絵本だと思います。

大抵の子が絵本に一番ハマる年齢は2~3歳頃でしょうか?その年齢の子供たちは、繊細でアーティスティックな絵より、シンプルで分かりやすい絵や、ふんわりとした優しいタッチの絵を好む子たちが多いように思います。

3歳前後の子たちが、『えんとつ町のプペル』を読んでどんなことを感じるのか。ちょっと興味深い。我が子がこの絵本を読むような年齢になったら、反応を注意深く見てみたいと思います。

「大人は子供をナメてる」発言はいかがなものか

『えんとつ町のプペル』製作のきっかけになったのは、タモリさんとのとある会話があったそうです。その会話というのが―

「ほとんどの大人は子供のことをナメてるよ」
その言葉が出たのは、『絵本』の話題になった時。

キングコング 西野 公式ブログタモリさんと話した『子供の話』」より

西野さんは同記事の冒頭でこんなことを言っています。

絵本を描いて、販売していると、親御さんから
「この絵本は子供向けですか?」
と質問される機会が少なくありません。

この言葉に含まれているのは、
「絵本にしては、ずいぶん描き込んでいるし、文章も長いけれど、コレ、ウチの子に理解できますか?」
といったところでしょう。

「子供の能力が自分(大人)よりも下」ということを決めつけている大人の口からしか出てこない言葉です。

率直に私が思うことを述べます。「ほとんどの大人は子供のことをナメてる」と言いますが。

それは子育てに日々奮闘するお父さん、お母さん、そして、絵本作家、絵本製作に携わる人たちをナメた発言だ。

 

西野さんは幼稚園児のころのご自身の体験をこのように語っています。

『絵本』となった途端、親や先生は「子供はこういうものが好きでしょ?」
「これだと、あなたにも分かるわよ」
と言って、やけにフワフワとした、やたらとカラフルで可愛い絵本だけを押し付けてきました。

僕はもう、細密画の戦艦や戦闘機、スタジオジブリを知っているのにです。
毎日、大人と同じような景色を見ているのにです。

西野さんに「この絵本は子供向けですか?」と質問してくる親御さんが、一体何歳のお子さんがいるのかは分かりません。

ただ、一つ言えることは、多くの親御さんたちは、お子さんが物心つく前から、熱心に読み聞かせをしてあげているのです。まだ絵本を読んでも、何ら反応すらなく、楽しんでいるかどうかさえ分からない頃から。

我が子は今2歳。1年前くらいまでは大した反応もなく心が折れかけ、週2~3回しか読み聞かせをしなかった時期もあります。

今では、寝る前に絵本読んで!攻撃でヘトヘトな毎日。

同じ絵本を何度も繰り返しせがむこともあれば、次から次へと別の絵本を持ってくることも。1時間読み聞かせをしても飽き足りなくて、こちらが音をあげてしまします。

我が家には結構いろんなタイプの絵本があるのですが、今子供が好んで選ぶ絵本は、ミッフィーの絵本や『しろくまちゃんのほっとけーき』、『だるまさんが』など。

まさに「フワフワとした、やたらとカラフルで可愛い絵本」。

 

今大好きなこれらの絵本も、物心つくころには興味も薄れ、読み聞かせをしてあげたこと自体忘れてしまっているのでしょう。

それでも、世の親御さんたちは、手をたたいて大喜びで絵本を読む子供の姿に成長を感じ、一生懸命読み聞かせをしてあげているんです。

 

西野さんが物心ついてから、親御さんや先生から好みでない絵本を押し付けられて「ナメるな!」と思い、それがプペル誕生のきっかけになったことは素晴らしいと思います。

だけど、「フワフワとした、やたらとカラフルで可愛い絵本」を大喜びで読んでいた時期が西野さんにもきっとあったと思うんです。

だからこそ大人たちは良かれと思って勧めてくるのであって、それは子供をナメているのではなく愛情だと私は思います。周りの大人が思うよりも、あなたの感性が鋭く、成長していただけのこと。

実際、大人が思っているほど子供は子供ではないのでしょう。

絵本を卒業し児童書へと移行していく間に子供たちが楽しく読める絵本は確かに少ないのかもしれません。だからと言って、「この絵本は子供向けですか?」と聞いてくる親御さんが子供をナメていると評するのはあまりにも乱暴な捉え方だと思います。

西野さんが否定的に思うタイプの絵本も、子供の心理や視覚について研究したうえで、作者の強いこだわりがあって誕生しているのです。

icon-lightbulb-o 参考サイトその1
赤ちゃんのおもちゃ・知育玩具 ハッピーチャイルド
パパ大豆のオススメ知育玩具セレクション
icon-lightbulb-o 参考サイトその2

 

小さな子供たちが喜ぶ「フワフワとした、やたらとカラフルで可愛い絵本」を生み出した作家さんたちは偉大です。

プペルはロングセラーになり得るか?見守りたいと思います

『えんとつ町のプペル』は、ウェブで無料公開して大変話題になりましたが、結果として一時、Amazonや楽天の絵本部門で売り上げナンバーワンになるほどのベストセラーとなりました。

\おめでとうございます!/

 

ところで、「絵本はベストセラーよりもロングセラーの物を選べ」と、そんな記事をとある雑誌で目にしました。長年に渡り人々に愛され続ける絵本は、本当に子供の心を掴んでいるからこそ売れ続ける、という考えですね。

我が家にある、子供のお気に入りの絵本の初版年をざっと調べてみました。

『だるまさんが』は2008年

比較的最近の絵本ですが、それでも9年前!十分ロングセラーと言える絵本です。

 

『おつきさま こんばんは』は1986年

31年前の絵本ですが全然古い感じがしません。このブログに来てくれる方々は、この絵本と同い年の人も多いかもしれませんね。

 

『しろくまちゃんのほっとけーき』は1972年

45年前の絵本。ホットケーキを焼くシーンの擬音が楽しく、我が子は暗記してしまうほど大好きです。

 

『いないいないばあ』は1967年

赤ちゃんへのファーストブックとして根強い人気の定番絵本。なんと50年前!我が子は2歳を過ぎましたが、まだ楽しそうに読んでいます。

 

『うさこちゃんとどうぶつえん』は1964年

1964年というのは日本での初版発行年。オランダで初めて発行された年はなんと1955年!62年も前です。さすがに日本語訳にも時代を感じますが、我が子は大好きです♪

 

『えんとつ町のプペル』は果たしてロングセラーとなり得るか?

長く人々から愛され続ける絵本となることを願っています。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

icon-clock-o 2017-07-07 icon-rotate-left  icon-user ちびこママ

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