実は私、子供の頃に絵本を読んでもらった記憶がありません。でも、母親は絵本が大好きな人なので、よく読み聞かせてくれていたらしい。
先日、実家にお泊まりした際、母が古い絵本を何冊か引っ張りだしてきました。
わっ、懐かしい!読み聞かせのことは思い出せないけど、絵は覚えてる!!
さっそく読んであげようと、子供に絵本を選ばせてみました。
手に取ったのは『きかんしゃやえもん』。
読み聞かせているうちに、何だか目頭が熱くなってきました。
『きかんしゃやえもん』ってどんな絵本?
『きかんしゃやえもん』は、なんと1959年に刊行されたご長寿絵本です。
現在でも新品で購入することができます。(岩波書店、「岩波の子どもの本」シリーズ)
古い蒸気機関車のやえもんが主人公で、他にも電気機関車やレールバスなど、さまざまな列車が登場します。
和製『きかんしゃトーマス』と言ったところでしょうか。
『きかんしゃやえもん』は古い絵本なので、ストーリー、挿絵、言葉遣いなど、全体的に時代を感じる作品です。
ストーリーのご紹介
ウィキペディアであらすじを読むことができます。
ウィキペディアには書かれていない心理描写なども含め、私もストーリーをご紹介したいと思います。ネタバレが嫌な方は、この写真から下は読み飛ばしてください。
やえもんは田舎の町の古い蒸気機関車。同じくらい年寄りの客車を引いて、町の大きな駅と機関庫の間を長年往復してきました。
町のためにずっと一生懸命頑張ってきて、体はボロボロ。なのに労わって貰えないから、いつも「ぷっすん、ぷっすん」と怒っています。
この絵本では、機関車が発する音と、感情を掛け合わせた擬音がよく使われています。
「ぷっすん」もそうですし、機関車が走り出す音と日々の不満を掛け合わせ、「しゃっ、しゃっ、しゃっ、しゃくだ、しゃくだ…」と言っていたり。
読み聞かせていると、ちょっと噛んでしまって読みにくいです(笑)
でも、子供は楽しそうに聞いてくれましたよ。
さて、ある時やえもんは町の駅で電気機関車やレールバスに出会います。
そこでバカにされてしまいます。「石炭を食べておいしいのか、貧乏汽車」などと、自分よりも若い列車たちにからかわれてしまうのです。
これに怒ったやえもんは、煙突から火の粉を撒き散らしながら帰路に着きます。
子供たちがやえもんに手を振っても、怒りながら走り去ってしまうやえもん。
そしてなんと、火の粉が田んぼのそばの藁に燃え移り、小屋の火事を引き起こしてしまいました。
町の人たちは大激怒で、やえもんに心無い言葉をかけます。
「やえもんを、叩いて壊してしまえ!」と・・・。
やえもんは、とんでも無いことをしてしまったと深く落ち込み、反省します。
駅員さんたちは町の人たちをなだめ、やえもんをかばってくれました。が、会議の結果、やえもんを鉄くずにする他ない、と決まってしまいました。
とうとう解体されることになり、電気機関車に牽引されていたところ、交通博物館の人が偶然通りかかり・・・。
さて、ストーリーのご紹介はこれくらいにしておきましょう。
と言ってもほとんど終盤ですが^^;
気になる方は是非、書店や通販などでお買い求めください。
古い絵本ですが図書館にもあると思います。
感動すると言うより「心に刺さる」
この絵本を読んでいて、なんだか冒頭から切ない気持ちになってしまいました。
古い絵本ですが、現代社会で働く人たちの生き辛さのような物と重なって、強く感情移入してしまったんですよね。
こんなような事を想像してしまいました。
・ずっと誰かのために長年働いてきた年長者が、新しい技術を持たないがゆえに若い世代に舐められる。
・体にムチ打って働き続けても、その努力を認めて貰えず、うっぷんが溜まって周りに当たってしまう。
・失敗をリカバーするチャンスを与えて貰えずに、処分を下されてしまう。
タイトルに「心が痛くなった」と書きました。
冒頭で「目頭が熱くなった」とも書きました。
それらは、感動したから
・・・と言うよりも、やえもんを現代社会で働く「誰か」に見立てて読み進めてしまい、なんだか痛々しくて、ザクリと心に…「刺さった」から、なのでした。
対象年齢は高め。だけど2歳の我が子は気に入った様子
この絵本は何歳くらいの子に読ませればいいのか、判断が難しいと思います。
文章量もページ数も多いし、挿絵も半分くらいは白黒です。時代背景が古いし、言葉遣いや絵の雰囲気も古い。
おそらく、読めるか読めないかで言えば、幼稚園の年長さん~小学校低学年くらいの子が対象かな、という印象です。
ストーリーや登場人物の気持ちなどを、ある程度理解するとなると、もう少し年齢が上のような気もします。
でも、この絵本を楽しめるかと言われると?古い絵本なだけに、小学校中学年でも難しいかもしれません。
ただ、当時2歳半の我が子は、不思議とニコニコしながら嬉しそうに聞いていました。
長い絵本なのに、読み終えると「もういっかい!」とせがんだり。
私はこの絵本について、心が痛くなったという意味で「心に刺さった」、と書きました。
ですが、最後まで読むと、じんわりと心が温かくなる、優しいお話です。
子供は、ストーリーはまだ理解出来なくとも、その優しい雰囲気は感じ取っていたのかもしれません。
この絵本は何歳の子に読ませればいいか?と問われたら、私は「2歳頃からでも大丈夫」と答えます。
子供が嬉しそうにページを眺めているようであれば、何歳でも大丈夫!読むのも擬音の所だけでも十分です。
読み聞かせを通して子供の成長に気づく
私は創作絵本を公開する際、0歳~4歳の間で対象年齢を書いています。
が、正直テキトウです(笑)
物語絵本は赤ちゃんには難しいかな?という判断で、大体3~4歳で設定しています。
が、当時2歳の我が子に読み聞かせをしていると、こちらが思うよりも遥かに難しい絵本を楽しそうに見ているんですよね。
だから、試しにいつもよりちょっと難しい絵本を読み聞かせてみてください。子供の成長がよく分かります。
楽しいシーンで笑う、悲しいシーンでつらい顔をする。
そうやって観察してみると、今お子様が求めている絵本はどんなものなのか、見えてくると思います。
最後に
『きかんしゃやえもん』を読んで、いろんな発見がありました。
絵本は時に、大人の心も揺さぶります。それは、絵本のストーリーに対する感動だけとは限りません。
子供の成長に気づくきっかけにもなります。こんな絵本も読めるんだ、とか、こんな表情をするんだ、とか。
そんな発見を与えてくれた、素敵な絵本でした。
『きかんしゃやえもん』は、懐かしさと切なさと、優しさの絵本。
お子さまと一緒に、やえもんの世界観に浸ってみませんか?
最後までお読みいただき、ありがとうございました。